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健康セミナー
2005年分

☆は現在在職しておりません。

第121回:生涯現役をめざして

耳鼻咽喉科 合津 和央 ☆
(日本耳鼻咽喉科学会専門医)

高いびきはかつて熟睡のしるしと考えられていましたが、最近の睡眠学の進歩で、健康上はむしろ注意信号だとわかってきました。いびきの音はのどに空気が吸い込まれる際に、のどが笛のように振動することで発生します。肥満や扁桃肥大などがあると、のどが狭いため壁同士が吸い寄せられて気道が閉じてしまいます。呼吸が止まり苦しいため睡眠が妨げられ、日中のだるさや眠気などの症状を起こします。これが睡眠時無呼吸症候群の病状です。日本人の1~2%に存在する病気と推測されていて、決して稀な病気ではありません。
睡眠時無呼吸のもたらす眠気は事故を時におこします。米国スリーマイル島での原発事故やJR新幹線運転士の居眠り運転なども、この病気が原因でした。睡眠時無呼吸が怖い理由はもう1つあります。夜間の度重なる酸欠状態は、ストレスとなって血圧を上げ血管を老化させます。ストレスは血流も悪くして血栓が生じやすくなります。重症の睡眠時無呼吸を治療しないと、最後には心筋梗塞や脳梗塞を引き起こし、寿命が縮まることが証明されています。
①リズムが不規則で、音が高いいびき
②呼気・吸気で起こる往復いびき(普通のいびきは吸気時のみ)
③突如止って、その後爆発的な音で再開するいびき
このようないびきは危険信号です。睡眠時無呼吸症候群の正確な診断は自覚症状だけでは不十分であり、一泊入院での検査が必要です。お近くの呼吸器内科や耳鼻科を受診して相談されることをおすすめします。

第120回:生涯現役をめざして

眼科 椎葉 義人 ☆

近年は、携帯電話やパソコン等を利用する機会が非常に多くなりました。他人とのコミュニケーション、情報を得る手段としては大変便利ですし、私自身も利用させてもらっています。
便利である反面、マイナスの面もあります。外来で診察をしていますと、「目が疲れる」、「目が乾く」と訴える患者様が多いように思えます。患者様は、「仕事でパソコンを長時間使用しています」とか、「携帯電話やパソコンでインターネットを長時間やっています」というようなことを口にします。こうした時には、凝視する時間が長く、瞬きの回数が少ないことが多いです。瞬きをしないと眼はだんだん乾いてきて、だんだん疲れてきます。
ひどい場合は充血を起こしたり、角膜障害が生じたりします。
ですから、「適度に休憩を入れて長時間の連続使用を避ける」、「瞬きの回数を意識して少し増やす」といった指導をしています。それでも改善しない場合には、点眼液を処方することもあります。
また、中には調節障害(いわゆる老眼)を合併している患者様もいらっしゃいます。このような場合は必要に応じ、メガネ等で矯正をする、といったようなことも大事と思います。さらにコンタクトレンズを装用している場合、症状がひどくなる場合がありますので、注意が必要です。いずれにしても、大変便利なものであるのは言うまでもありません。眼のことを考えて、節度ある利用をしましょう。

第119回:生涯現役をめざして

皮膚科 滝野 長平 ☆
(日本皮膚科学会認定皮膚科専門医/大学功労会員)

今年の3月に皮膚病の疥癬にイベルメクチンと言う内服薬の使用が認可されました。
認可獲得は臨床皮膚科領域では数年来の念願でしたので、簡単に紹介させていただきたいと思います。疥癬はヒゼンダニと言う0.5mmにも満たない小さなダニが皮膚の表面の角質層に寄生して起きる、人から人に伝染する痒みの強い皮膚病です。とくに珍しい病気ではありませんので、ご存知の方も多いかと思います。
治療の面では認可されている薬剤は外用薬一種のみで、効果は短期間には得られない状態でした。
このような状況のなか、最近一部ではありますが、老人を扱う施設で頻発することが起こり、体の不自由な方での治療はご本人のみでなく、薬を塗る側の負担(首から下の全身に塗り、一定時間後洗い流すことを繰り返す)も大変なものでした。このような労力の要らない有効な薬剤の出現を願っていたわけです。イベルメクチン(商品名ストロメクトール)は3年程前から体内に寄生して病気を起こす腸管糞線虫症に対し承認された内服薬の殺虫剤です。疥癬に対しての効果は不明でしたが、臨床研究は海外では10年以上前からで、本邦でも数年来その有効性の報告が次々と出され今回の認可に繋がったわけです。
内服は体重に応じた量を週1回ですが、症状の重いものでは数回繰り返す必要があります。副作用は大きなものはありません。治療に就いては、現時点では薬価は利用者負担になりますので医療機関にご相談ください。

第118回:生涯現役をめざして

外科 安藤 正幸 ☆
(日本外科学会専門医 日本消化器外科学会認定医)

近い将来、薬による治療で癌を克服できるといいのですが、胃癌や大腸癌の治療は今日の医療ではまだ残念ながら手術による切除が第一選択です。
早期であれば、内視鏡よる切除術が有効です。最近では病変のある粘膜を一括して切除する粘膜離断術が施行されています。しかし内視鏡的に切除できない病変では、開腹術や、腹腔鏡による手術が施行されます。
最近の手術は道具の進歩により、以前は糸で結びきっていた血管を電気メス等で灼いて切ったりできます。また胃癌や大腸癌を切除する際にも自動吻合器といって一瞬のうちに切って縫合できる器械を用います。更に最後に残りの胃や大腸を腸管とつなぐ際にも自動吻合器を用い5分位で終了します。この吻合という作業は以前は針と糸を用い手縫いで行っていた手技で30分以上はかかっていました。この様な道具の進歩で、よりはやく、確実にまた手技にばらつきがなくなり術後の合併症もすくなくなりました。
手術が安全に施行され術後の合併症がなく一日も早く元気になり退院していただくことが私たち外科医にとっては、一番の望みです。しかし必ずしも良い結果だけがついてくるとはかぎりません。手術を受ける際には病状の充分な理解の上に手術の必要性を納得されて受けてください。しかし近い将来、薬で癌を克服できることを、切に望んでやみません。

第117回:生涯現役をめざして

脳神経外科 森 茂夫 ☆
(日本脳神経外科学会専門医)

中高年者に多い脳血管障害は、脳神経外科領域では最も頻度の多い疾患群です。脳血管障害にはクモ膜下出血、脳出血、脳梗塞などが含まれ、ほとんどすべての疾患が、突然に前ぶれなく発症します。その症状とは、激しい頭痛・意識障害・半身マヒ・知覚障害・言語障害・視野の障害などです。これらの症状の出現は、脳血管障害発生の危険性が高く、早急に専門的検査及び治療が必要となります。さらには、脳卒中ケアユニットと呼ばれる治療監視環境下において、神経学的状態および生命機能のモニタリングやその管理、そして早期リハビリ開始へとつながります。このような一連の流れの中で治療が行われることによって、治療効果の向上と合併症の頻度が減少し、脳血管障害による死亡率は劇的に減少しています。
しかし、脳血管障害の治療水準が向上しても、最も大切なことは発症を予防することにあります。その予防の基礎は、多様な危険因子の治療であります。ヨーロッパでは、食事内容の改善により健康的な生活様式となったこと、運動を多くするようになったこと、塩分摂取量が減少したこと、これらが喫煙率や飲酒率の低下と重なり、脳血管障害発症率が低下しているという事実が証明されています。具体的な危険因子としては、①高血圧症②糖尿病③高脂血病④喫煙などが上げられます。最近では、メタボリック シンドロームという、新しい疾患概念が生まれ、発症前の危険因子まで予防するという所まで、疾患予防の意識は高まって来ています。

第116回:生涯現役をめざして

外科 兼子 順
(日本外科学会認定専門医 日本消化器外科学会認定医)

消化管における早期癌の診断は著しい発達を遂げてきました。中でも内視鏡検査は診断だけに留まらず、治療の領域をも担当する時代になりました。適切な治療を行うためには、正確な診断が要求されます。これには数多くの技術開発が積み重ねられてきました。次にその検査法の一部を紹介します。

【色素内視鏡】通常の観察だけでなく、様々な色素を病変部に散布して、より多くの情報を得る。

【超音波内視鏡】内視鏡の先端部から超音波を出して、病変部の性状や病変の深部および病変周囲の情報を得る。

【拡大内視鏡】病変部の拡大観察によるピットパターンにより診断する。

【狭帯域フィルター内視鏡】粘膜の微細構造や毛細血管網の変化により診断する。

 これらの検査法を巧みに組み合わせて、より正確な診断を行います。また、病理医(顕微鏡等を用いて診断する学者)と臨床医(内視鏡医や外科医)との協力体制により診断学が切磋琢磨され、この分野の発展をより深く、偏りのない信頼感のあるものにしてきました。この消化管早期癌の診断学の進歩は、低侵襲治療である内視鏡治療や腹腔鏡下手術なども育ててきました。

 今や日本において、早期癌の多くが内視鏡にて発見、診断され、内視鏡下粘膜切除術(EMR)や更に高度な治療である内視鏡下粘膜下切除術(ESD)などの低侵襲治療が行われて来ております。当院でも積極的に低侵襲治療に取り組んできております。日本の早期癌診断および内視鏡治療は世界のモデルとなり得べきものを作り上げたと言えます。また、日本の内視鏡治療は手術と同様、世界に誇る器用さで、既に多くの患者様がその恩恵を受けてきております。

第115回:生涯現役をめざして

整形外科 林 秀剛 ☆
(日本整形外科学会専門医)

整形外科領域の最新医療として、今回は椎間板ヘルニアを例にとってお話しします。これまで椎間板ヘルニアには、その発症にかかわる原因遺伝子の存在が示唆されていましたが、最近その中でも日本の理化学研究所や富山医科薬科大学などのチームが世界で初めてつきとめたCILP遺伝子が注目されています。この遺伝子は、関節の軟骨の老化に関与し、遺伝子の働きが強いと軟骨細胞にできた傷の再生を妨げることが確認されています。健康な人の17%、椎間板ヘルニアの人の25%に認め、この遺伝子を持つ人は、持たない人に比べて椎間板ヘルニアの発症リスクが1.6倍にもなることがわかりました。発症要因の40~50%以上が遺伝的な影響と見られており、さらに腰へのストレスや喫煙などの環境要因が加わると発症しやすくなると考えられています。近い将来、椎間板ヘルニアの新しい治療法や画期的な治療薬が登場するでしょう。

 椎間板ヘルニアに対する手術療法も変化していきます。20年前には大学病院の脊椎手術で1-2を争うほどの手術件数でしたが、今ではほとんどやられていないのが現状です。これは、突出した椎間板が自然消滅することがわかったからです。特殊な例を除いて(麻痺が回復しない、仕事を休めないなど)ほとんどは保存的治療で軽快します。手術法の進歩という点では最小侵襲手術(MIS)が徐々に普及しつつあります。以前から行われていた酸素注入法やレーザー蒸散法は、一時ブームになりましたが、手術適応が限定され、効果も50%程度で最近は減少してきています。内視鏡による髄核摘出術(MED)は、小さな傷(2cm以下)で筋肉を痛めにくく、離床も早いことから最近多くの病院で行われています。難点は、技術的に難しいため、十分にトレーニングを積んだ専門医しかできないことです。従来の後方髄核摘出術(LOVE法)も今では3日程度で起立歩行が可能となり、一週間程度で退院できます。たとえ手術をすることになっても、それほど心配する必要はないでしょう。

第114回:生涯現役をめざして

歯科口腔外科 秋月 弘道(昭和大学客員教授 日本口腔外科学会指導医/専門医 介護支援専門医)

最近の歯科医療のトピックといえば、患者本人の骨髄から採取した細胞を使い、歯槽骨など歯の周囲の組織を再生させる治療法です。培養した細胞などを利用して、様々な臓器や組織を再生させる治療の中で、最も実用化が進む分野の一つです。しかし、残念ながら一般的に臨床で用いられるまでにはもう少し時間がかかりそうです。

現在、すでに臨床的に盛んに応用が進んでいる最新医療に人工歯根(歯科インプラント)があります。現在、多くの方が義歯(いわゆる入れ歯)を使用しています。総義歯での咀嚼能力は天然の歯のおよそ5分の1になります。大きな楽しみの一つである食事が、歯の喪失のために苦痛となる場合も少なくありません。

人工歯根は歯のないところに人工の歯根を埋め込んで、しっかりした土台をつくり、その上に天然歯と同じように使える人工の歯を装着したものです。インプラントはかむ力や耐久性が天然の歯に近く、適切に応用されればすばらしい方法です。

しかし、人工歯根も魔法の治療法ではありません。欠点として、手術が必要なこと、適応部位に必要な骨があること、治療期間に数ヶ月をようすること、および健康保険の適応がないので費用が高額なことなどがあげられます。

今後、どんなに医療技術が進歩しても、健康な自身の歯に勝るものはありません。予防を第一に考え、上手に歯科医院をご利用していただき、歯を残す健康な口腔であることを願います。

第113回:生涯現役をめざして

外科 伊藤 雅史 ☆
(万国外科学会・国際消化器外科学会正会員 日本外科学会指導医 日本消化器外科学会指導医 日本臨床外科学会・日本脈管学会評議員 日本透析医学会会員)

メタボリックシンドロームでは心筋梗塞や脳梗塞、足の壊疽などの重篤な合併症を起こす前に、動脈硬化による血管の変化を早期に発見することが重要です。脈拍の触診やレントゲン検査でもある程度分かりますが、より早期の変化を見つけるために、最近では以下の二つの方法が使われています。

第一の方法は頸動脈超音波(エコー)検査法で、動脈硬化による頸動脈の内腔の太さや壁の厚さ、血流状態を形の変化として捉えるものです。これは、動脈硬化の初期変化と同時に、脳梗塞の直接的な危険度をも知ることができる有力な検査方法ですが、一回の検査で30分程度の時間を必要とします。

第二の方法は脈波伝達速度(PWV)測定法と呼ばれるもので、動脈機能の変化を調べるものです。この検査法は一回にわずか3~4分間で行うことができる簡単なもので、現在では広く行われています。

実際には血圧計のカフを両腕と足首の合計4ヶ所に巻いて、同時にそれを膨らませ、次いで同時に空気を抜いて、血圧とカフに伝わる脈の波形・脈波を記録します。動脈が厚く硬いほど、そして内腔が狭いほど、血流速度が速くなることを利用したものです。

高血圧や高脂血症、糖尿病、喫煙などの危険因子を持つ方は、定期的にPWVを調べることにより、早期に動脈硬化を発見して治療に役立てることが重要です。

第112回:生涯現役をめざして

脳神経外科 岩佐 英明 ☆

どちらものナイフも放射線で脳の病気(主に脳腫瘍)を治療する器械ですが、サイバー・ナイフは、頭に何もつけずに患者様をベッドに寝かせて放射線治療するものです。自由自在に手を動かせるロボットの手の先に、適当量の放射線(レントゲン線)を飛ばせる小型の器械を持たせて、様々な方角から放射線を出して、目的の腫瘍に当てます。照射の途中で弱い正常な組織に放射線が当たらないように、色々と安全な方角から、放射線を当てるのです。計算上の理論的精度は、0.65mmと非常に優秀です。現在、日本国内では頭の病気に対してのみ許可されていますが、外国では、頭より下の病変例えば肺癌などに対してもこの器械で治療が可能です。
 ガンマー・ナイフは、今のところ、頭と上部頚部の病変にのみ使えます。先ず、患者様の頭に、立方体型をしたチタンのフレームを局所麻酔下に手術して取り付けます。頭の前方2ヶ所、後方2ヶ所の4ヶ所をピンできっちりと固定します。治療の時は、このフレームを放射線治療装置の本体に合体させるので、非常に精度が高くなり、0.1mmまで識別出来るとされています。両者とも、コンピューター制御で治療を行います。治療時間は、病気によって違いますが、おおむね数十分間の様です。
 サイバー・ナイフの方では、少し精度が異なりますが、頭の4ヶ所にピンを止める手術はしません。また、両者とも脳腫瘍ばかりでなく、顔面痙攣や三叉神経痛の時にも使えます。照射による、痛みや脱毛などの副作用は殆どみられません。
どちらの装置も、つい最近、埼玉県内で稼動し始めました。この様に埼玉県内に、脳の病気に対して、世界でも最新の放射線治療装置が二つもあります。脳神経系の病気の場合には、是非、当院脳神経外科に、いらして尋ねてみてください。

第111回:生涯現役をめざして

内科 高梨 日出雄
(日本内科学会認定医)

今日は「最新医療の現状」、とくに消化器疾患の内視鏡治療についてお話したいと思います。

内視鏡と言っても胃カメラ、大腸カメラ、血管内視鏡など現在の医療の現場で使用されているものは様々あります。今日は、その中でも現在の医療の現場でおそらく最も使用され、そして最も近代医学の進歩に貢献したと考えられるいわゆる胃カメラについてお話します。

胃カメラが、約40年前に登場した時は「苦しい割には得られる情報は少なく、あまり当てにならないもの」でした。しかし現在では、「最も信頼性の高い頼りになるもの」となっています。胃カメラは当初「苦しいもの」、「二度と受けたくない」ものでした。しかし現在では内視鏡器具の進化と、技術の進歩、そして意識下鎮静法の導入により「知らないうちに終る」とか「楽に終る」ものとなりました。

そして胃カメラによる内視鏡治療が出現しました。胃カメラは当初、胃潰瘍、癌を発見する検査器具でした。しかし現在では内視鏡治療を行う医療器具となっています。第一に消化管出血に対する内視鏡止血術があります。

以前は消化器の大量出血に対しては輸血と緊急手術しかありませんでしたが、近年は内視鏡止血術により対応可能となっています。また致死的な疾患である食道静脈瘤破裂に対する治療の進歩により出血コントロールが可能となってきています。また早期胃癌を対象とした内視鏡的粘膜切除術がスタンダード治療となっています。胃カメラが医療に及ぼした貢献は計り知れないものがあります。

当院でも患者さんに負担が少なく、早期の回復が期待される内視鏡治療を積極的に取り入れて施行していきます。

第110回:生涯現役をめざして

理事長 前島 静顕 ☆
(東京医科歯科大学大学院臨床教授 日本外科学会認定指導医 日本消化器外科学会認定医)

新年明けまして、おめでとうございます。昨年2004年は皆様にとってどんな年だったでしょうか。身近な問題から始まって、地域社会、政界、医療界、さらに国内外の様々な出来事、地球規模の変化等、実に多くの印象深い事件や、天変地異が次々と思い出されます。長い猛暑と、例年にない数多くの台風、洪水による全国各地の大水害、そして、10月には新潟中越地方を襲った大地震の爪跡が今も復旧を遅らせていると聞いております。全国各地から、暖かい、支援が様々な形で寄せられ、私共も微力ながら協力させていただきました。

このような支援・ボランティア活動を通して、わたしたち人間の心の暖かさや思いやり、善意、誠実を何度も実感しましたが、圧巻は、ガケ崩れの斜面に車ごと埋まった、母親と二人の子供さんに対する救出作業でありました。奇跡が起こりました。二歳の男の子が九十二時間後に無事救出されたのです。

その後残りの二人の救出作業が、実に多数の人々によって献身的に続けられました。残念ながら、お母さんと娘さんはすでに亡くなられていましたが、私が最も感動しましたのは、あのような危険な斜面で、強い余震が頻発する中、決死の覚悟で何日も、救出に取り組まれている多くの人々の姿でした。欲得を全く超越し、自分の命をもかける最高の人格をまのあたりに出来ました事は、感動の極みでした。

話は変わりますが、わたしたちが取り組む医療現場でも似たような状況に出会うことがあります。ガンの宣告を受け、短い余命を知らされた時、人は恐怖・怒り・絶望・後悔などで悩み、苦しんだ後、受容の段階まで到達出来ると平静な心になり、自分が宇宙から命をいただいた事に対する感謝、そして、命ある限り、他の人のためになる事をして人生を終りたい、と思えるようになる、と言われます。医師である私を含めて、すべての医療者はこのような感覚をしっかりと身につけていなければならないと痛感しています。

さて、本年は最近話題のメタボリックシンドロームにつき各専門医が解説します。ご期待ください。

当院は今後さらなる医療の発展のため、ソフト面の整備の充実をはかり、
当院の設立の原点である「思いやりのあるやさしい医療」と「最新の高度医療」の実現に向けて努力を続けていきます。

急患は、24時間365日
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