健康セミナー
2011年分
- 第193回:生涯現役をめざして
- 第192回:生涯現役をめざして
- 第191回:進行・再発癌に対する免疫療法の今
- 第190回:痔
- 第189回:あなたの身長、縮んでいませんか?
ー背骨の骨折と骨粗しょう症のお話ー - 第188回:大腸がんの検査を受けましょう
- 第187回:歯ぐき(歯肉)の腫れ
- 第186回:良性発作性頭位めまい症
- 第185回:胃がんの内視鏡による切除
- 第184回:健康増進と健康習慣
- 第183回:糖尿病と歯周病
- 第182回:新年のごあいさつ
☆は現在在職しておりません。
第193回:生涯現役をめざして
循環器内科 那須 学 ☆
(日本内科学会認定内科医 日本循環器学会専門医)
日本人の死因はご存知の方も多いでしょう。厚生労働省が本年9月に公表した「死因順位」では、例年通り悪性新生物(がん)が1位(29.5%)、続いて心疾患(15.8%)・脳血管疾患(10.3%)となっています。では世界保健機構(WHO)の発表ではどうでしょうか?実はWHOによると死因の1位は虚血性心疾患(17.1%)、続いて脳血管疾患(9.8%)、呼吸器系悪性新生物(5.8%)となっています。
随分日本と違いますが、これは悪性新生物をいわゆる「肺がん」「胃がん」など個別に分類しているためです。原因が異なる様々ながんを全て「悪性新生物」とまとめてしまうのは乱暴すぎる気がしますし、またこの記事が「虚血性心疾患」に注目するきっかけになれば…と思います。
「虚血性心疾患」とは「狭心症」や「心筋梗塞」などの病気のことです。この病気の原因は「動脈硬化」つまり「血管の老化」ですので虚血性心疾患は「全ての人に起こる病気」と言えます。
心筋梗塞は発症直後の死亡率が極めて高い疾患です。このため、全国で最も医師が少なく救急医療が手薄な埼玉県では、「心筋梗塞になる前」つまり「狭心症」の発見や予防が特に重要だと感じております。ただ、狭心症は「問診」が重要とされていますが、外来の混雑の中でゆっくりと患者様の訴えを聞く余裕がないのが現状です。
私は虚血性心疾患を専門としておりますが、「診察・治療がすめばかかりつけの医院に帰っていただく」というスタイルのため、外来でじっくりと患者様の話を聞く余裕があります。胸の症状で不安のある方はぜひ一度ご相談にいらしてください。
第192回:生涯現役をめざして
外科 高畑 太郎 ☆
「ときに治し、しばしば和らげ、つねに癒し、望むべくは予防する」
これは、16世紀のフランスの外科医、アンプロワーズ・パレの言葉です。アンプロワーズ・パレ(1509-1590)は外科技術の発展に多大な功績を残し、それまでの「床屋医者(床屋の本業とともに、外科処置を行う職業)」の地位を高め、「近代外科の祖」と呼ばれる存在になっています。
16世紀のことですから、本当に「ときに治し」であったのでしょう。しかし、医学技術が向上した現在でも、一部の良性疾患を除き、ガン、糖尿病、脳梗塞、心臓病など、さまざまな病気に完治はなく、いまだ不完全にしか治すことができません。医療というと、治すことが絶対のように思われる方が多いと思います。しかし、治すのは「ときに」で、不完全にしか治すことができないのだということを理解することで、納得して医療を受けるための一助となるのではないでしょうか。
一方、「和らげ」「癒す」には、しばしば、つねに、という形容詞がついています。私たち医療従事者の最も肝心な役割は、患者さんを「和らげ」「癒す」ことなのだということを肝に銘じ、医療を提供していかなければなりませんし、病院を訪れる患者さんは、何よりもこのことを求めていると思います。
病気や死は誰にでも必ず訪れます。しかし、できるだけ永く健康でいるために、上手に検診、人間ドックなどを利用され、病気の早期発見、また予防に心がけられるとよいのではないでしょうか。「望むべくは予防する」です。
第191回:進行・再発癌に対する免疫療法の今
総合診療科 石田 孝雄 ☆
(日本消化器外科学会専門医/指導医 日本消化器内視鏡学会専門医/指導医 日本外科学会専門医/指導医)
ジェンナーによる種痘ワクチンの発明発見以来、病気の予防にワクチンを投与し、あるいは病気に罹患していてもその勢いを止めるワクチンが開発されてきました。
癌に対してもワクチンを作り、ワクチンで治療する努力がなされてきましたが、実は、決定的な癌ワクチンは現在に至るまで開発することができませんでした。
最近、子宮頚癌に対するワクチンが投与されるようになりましたが、これは癌自体に対してのワクチンではなく、その原因であるHPV(ヒト・パピロマウィルス)に対するワクチンで、原因となるウィルスに感染しないようにするためのワクチンです。いったん癌ができると、がん自体は、スルスルと人間の免疫機構をすり抜け、まるで、自分の正常な細胞と同じように大きくなります。
癌は自分の中では他人のように思いっきり悪さをして、自分に対して害悪をしたい放題するにもかかわらず、人間は自分の癌を異物として認識できないのです。
仮に免疫機構が作用しても、すでに時遅く、大きくなりすぎて自分の一部と化した癌を、さらに攻撃することはなくなります。これを免疫学的寛容といいます。
癌を異物と認識し、これを攻撃排除するワクチンこそが本ものの癌ワクチンたり得ます。
最近の研究で、「癌ペプチドワクチン」という、がん細胞の膜に存在するタンパク質を異物と見なして攻撃するワクチンが開発され、また、「樹状細胞療法」といって、免疫学的寛容を是正し、自分の白血球で癌を攻撃する方法が発見されました。
近い将来、手術や薬物療法と並んで、癌の免疫療法が活躍する時代が訪れるのもそう遠くはないと思われます。
当院でも、時代の趨勢に遅れないよう優しい癌の治療を心がけています。進行再発癌で悩んでいるみなさんの福音となるよう、私たちは日々努力していますので、お悩みの際には気兼ねなくご相談ください。
第190回:痔
外科 吉田 剛 ☆
(外科学会専門医)
日本人の3人に1人は痔に悩んでいると言われます。痔は痔核(いぼ痔)、裂肛(切れ痔)、痔ろうの3つに大別され、それぞれ症状や治療法は異なります。
①痔核
痔のうち約6割を占めます。排便時のいきみなどが主な原因で、肛門部の血管壁がうっ血や脱出をきたし瘤となったものです。主症状は腫脹、出血、疼痛です。痔核の治療としてまず行うべきは後に述べる生活習慣の改善です。その上で、保存療法(坐薬および内服薬投与)を行います。それでも改善しない場合は症状により硬化療法、ゴム輪結紮療法、レーザー療法、結紮切除手術等を行います。
②裂肛
硬い便が排出される際に、肛門上皮が裂け、出血、疼痛を伴います。ほとんどの急性期の裂肛は短期間で軽快します。ときに治癒が遷延化し肛門狭窄をきたすようになると手術療法が必要になります。
③痔ろう
肛門周囲が感染し膿瘍が形成されると、その治癒過程で肛門と皮膚を連絡する瘻管といわれる穴ができることがあります。これを痔ろうといいます。再び感染、炎症が起これば膿が出ますが、なければ無自覚のまま経過します。治療は手術のみで、瘻管を切除するというものです。
痔は生活習慣病とも言われ、生活習慣の改善が予防や治療に大きく寄与します。具体的には便秘や下痢にならないよう排便習慣を整える、アルコールや香辛料を控える等が挙げられます。これら生活習慣の改善を試みても症状が改善しない場合は、病院へ受診されることをお勧めします。
第189回:あなたの身長、縮んでいませんか?
ー背骨の骨折と骨粗しょう症のお話ー
整形外科 金谷 幸一☆
(東京女子医科大学医学部整形外科講師 日本骨粗鬆症学会評議員)
最近、背が低くなったとか、背中が丸くなったとか感じている方はいませんか?もしかしたら、
その中の多くのひとは、骨粗しょう症かもしれません。
「歳をとってくると背が低く丸くなるのは、老化現象だから当たり前」と考えている方が多いと思います。そのような考えも間違いではありませんが、若いころに比べて4cm身長が縮んだ人の約90%には、背骨に骨折があることがわかっています。「え!転んだりしたことなんかないのに?」。そうなんです。背中や腰に痛みを感じないうちに、背骨が骨折する人の方が、転んで骨折する人よりずっとたくさんいるのです。そして、1つの背骨が骨折すると、次から次へと新しい骨折が起きて、知らないうちに背が縮んでしまうのです。また、そのような状態をそのままにしておくと、転んだ時にあしの付け根の骨折を起こして、寝たきりになってしまったりします。
ではどのようにしたら良いのでしょう。まずは、医療機関を受診して骨粗しょう症の検査をしましょう。その時に重要なのは、骨密度検査だけでなく、背骨の骨折があるかどうかをエックス線写真で調べることです。そして今では、骨を強くするお薬がたくさん出ています。骨密度や背骨の骨折の有無、年齢や性別、治療中の病気や飲んでいる薬など、ひとりひとりの状態によって適切なお薬を選択することが重要です。
もう歳だからとあきらめず、お医者さんと相談して、積極的に治療しましょう。
第188回:大腸がんの検査を受けましょう
外科 青柳 治彦 ☆
(日本外科学会専門医 日本消化器内視鏡学会専門医 がん治療認定医)
食生活の欧米化にともない、大腸がんは急激に増加しています。日本国内では、大腸がんで死亡する患者さんは、50年前の約10倍に増加しています。2015年には肺がんや胃がんを抜いて、最も発生率の高いがんになると考えられています。つまり、大腸がんを早期に発見できるかどうかは、日本の全国民にとっても大きな問題になっているのです。
では、大腸がんの検査にはどのようなものがあるのでしょうか?主なものとして、①直腸指診(おしりから指をいれて直腸にポリープやがんがないかを調べる検査)、②便潜血検査(便に血が混じっているかどうかを調べる検査)、③注腸造影検査(おしりから腸にバリウムを入れて腸の写真をとる検査)、④大腸内視鏡検査(おしりからカメラをいれて腸の中を観察する検査)、の4つがあります。女性の患者さんをはじめ、どの検査も精神的に抵抗のある検査ばかりかもしれません。このため、便潜血検査が陽性で大腸内視鏡検査をすすめられても、「自覚症状がないから」、と検査をいやがる患者さんもいらっしゃいます。しかし「自覚症状のない段階で検査をする」ということは、「早期に治療ができる機会をえられた」、という意味でとても幸運なことなのです。
大腸がんは他のがんに比べて進行が遅く、早期に見つかればあまり命にかかわることはありません。大腸がんの早期発見には、抜け道はなく、検査をするしかありません。定期的に検査を受けることをおすすめします。
第187回:歯ぐき(歯肉)の腫れ
歯科口腔外科 田中 憲一
歯ぐきが腫れ、痛みを経験した人は、多いと思いますが、しばらくすると落ち着く場合も有り、その原因が分かっていない人もいるのではないでしょうか。
歯は、歯槽骨という骨の中に根の部分がありその周囲を歯肉という薄い粘膜で覆っています。
歯の辺縁の歯肉が腫れるのは、歯周病です。細菌感染のため炎症が生じ、歯槽骨の吸収が起きています。口臭、出血、歯の動揺などの症状が出現します。専門的な歯周病検査、治療により進行を抑制することが可能です。
強い痛みの後、歯の根の部分の歯肉が腫れるのは、根尖性歯周炎です。虫歯が原因で歯の神経に炎症が起こり、神経が腐った様な状態になります。根尖部から歯槽骨の吸収が起き歯肉が腫れ、膿がたまってきます。全身状態によっては、アゴや首の周りまで腫れる原因になることもあります。抗菌薬の服用と根管治療で症状を落ち着かせることが可能ですが、やはり抜歯が必要となる場合もあります。
痛みが無く、歯肉がゆっくり腫れ、比較的硬い場合は良性腫瘍が考えられます。簡単な切除手術で治癒します。
悪性腫瘍(がん)の場合は、しだいにザラザラした様になり痛みや出血が生じ、範囲も拡大してきます。初期の場合は、歯周病と症状が似て区別がつきにくいことも有ります。
前歯部の辺縁歯肉が硬く増殖している場合は、服用薬の副作用も考えられます。高血圧、不整脈、狭心症の治療薬のカルシウム拮抗薬や、抗痙攣薬のフェニトインの服用者の多くに認めます。
原因によって治療方法も異なります。やはり早期の診断が必要となります。
第186回:良性発作性頭位めまい症
耳鼻咽喉科 合津 和央 ☆
(日本耳鼻咽喉科学会専門医)
高齢化社会に伴いめまいを訴える患者さんは年々増えていますが、一番頻度の多いありふれた病気が良性発作性頭位めまい症です。
なんだか長ったらしい病名ですが、典型的な症状は
1)朝起きて立ち上がったり、寝返りをうったりで頭の位置を変えたときに
2)突然発作的にぐるぐる回るめまいがおこる
3)しかし、動かなければめまいは1分以内に収まる
4)意識は正常で、激しい頭痛や手足の麻痺はなく、耳鳴や難聴がめまいに伴うこともないといった症状です。
めまいが激しいと救急車で受診される方も珍しくありません。脳ではなく耳の病気ですので、症状がいかにつらくとも転んで怪我をしなければ生命に関わることはありません。「良性」という形容詞がついているのは、大部分の方では2週間程度で自然にめまいが収まるという意味です。
この病気の原因は耳の奥にある三半規管のなかに耳石という小さい石が紛れ込むためです。耳石がなぜできるかすべてはわかっていませんが、この病気になり易いのは女性、高齢者、運動不足の方ということは経験上わかっています。
診断は問診で上に挙げたようなめまいの性質を聞き出して、眼の動きの異常を捉まえれば十分です。耳石は非常に小さく顕微鏡でないと見えないので、CTには写らず、この病気の診断に画像は役に立ちません。
治療は症状に合わせて点滴をしたり、薬を飲んだりすることもありますが、根本的には頭をたくさん動かし石を早く散らすためのリハビリが大切です。治り易い反面再発も多いのがこの病気の特徴です。朝起きるとめまいが繰り返しおこる方、一度耳鼻科にご相談ください。
第185回:胃がんの内視鏡による切除
外科 濱田 節雄
(指導医・専門医:日本外科学会 日本消化器外科学会 日本消化器内視鏡学会 日本大腸肛門病学会 日本消化器病学会)
胃がんは肺がんに次いで死亡者数の多いがんですが、診断技術の進歩や検診により早期に発見される例が増えて、治るがんの代表ともいえます。胃がんは胃壁の一番内側の粘膜層、粘膜下層までを早期胃がん、それより深い筋層やしょう膜に及んだものを進行がんと呼びます。
以前は早期胃がんであっても開腹手術(胃切除)が行われていました。しかし最近は早期胃がんを内視鏡で切除する治療が年々増加しています。この内視鏡による切除は胃の機能を温存した体に負担の少ない治療法で、手術と同等の治療成績があげられます。また手術に比べ後遺症がほとんどなく、術後のQOL(生活の質)が格段に良好です。
最新の内視鏡的切除(内視鏡的粘膜下層剥離術:ESD)は高い効果を上げています。ESDではまず、がんの直下の粘膜下層にヒアルロン酸を注入し、筋層からはなします。次に電気メスを用いてがん周囲を切開しさらに病変部の剥離を行うため、大きな病変であっても一回で完全切除が可能です。また切除された標本で正確にがんの広がりを知ることができ、必要なら、さらに手術をしますので再発が極めて低い治療法です。ただしESDは転移が疑われる場合は適応外で、対象はリンパ節転移の可能性がほとんどない粘膜層のがんに限られます。定期検診を受けて早期胃がんのうちに発見できれば、このように内視鏡で取り除くことができますから、ぜひ定期検診をお勧めします。
第184回:健康増進と健康習慣
外科 兼子 順
(日本外科学会認定専門医 日本消化器外科学会認定医 厚労省認定臨床研修指導医)
健康増進の基本的な考え方として、1986年第1回ヘルス・プロモーション国際会議がカナダの首都オタワにて開催され、「オタワ憲章」と呼ばれるようになりました。「オタワ憲章」を次に列記します。
•健康増進とは、人々が自分の健康の管理を強化し改善することを可能にする過程である。
•健康は、生きることの目的ではなく、毎日の生活の資源である。
•健康は身体的能力であると同時に、社会および個人の資源である。
難しい言葉が並びましたが、健康に過ごすためには具体的にどのようにすれば良いのでしょうか?様々な職種の人が、多岐にわたって健康に過ごす方法を発出しています。なかには、眉唾物も存在します。本屋さんにも、健康増進に関する書籍は何十種類も存在しています。船頭多くして船山に登るという諺もあり、迷ってしまいます。
ここで、1972年にブレスローらが発表した、証拠(根拠)に基づいた「身体的健康と7つの健康習慣」を列記します。
1.適正な睡眠時間
2.喫煙しない
3.適正体重の維持
4.適度な飲酒
5.定期的な運動
6.朝食の摂取
7.間食をしない
4番目の適度な飲酒については、ご家庭の奥様から「何で飲酒を勧めるの?」と、お叱りを受けるかもしれません。しかし、欧米では適量の赤ワインの摂取により、心血管イベント(脳卒中や狭心症・心筋梗塞など)の発生が抑制されたと統計学的に証明されました。白ワインには赤ワイン程の効果が認められなかったそうです。
無理をしないで、丁度良い位置に自己調整する事が健康に良いのではないでしょうか。
第183回:糖尿病と歯周病
歯科口腔外科 秋月 弘道
(昭和大学客員教授 日本口腔外科学会専門医/指導医 介護支援専門医)
糖尿病にかかると、歯周病の発症や進行の度合いが高いことがわかっていて、歯周病は糖尿病の第6の合併症といわれています。これは糖尿病にかかると歯の周りの歯肉や歯槽骨においても、免疫機能の低下、代謝異常、微小血管障害などが起こり、歯周病菌に感染しやすく、組織の破壊が起こりやすくなるためだと考えられています。血糖の高い状態では、血液中のたんぱく質が糖化され、糖化されたたんぱく質は免疫細胞(マクロファージ)を刺激して、炎症性サイトカインを過剰に産生させます。このサイトカインが歯周病の炎症症状を強め、歯周組織の破壊を招くと考えられます。
また、歯周病も糖尿病へ影響を及ぼすと考えらます。
歯周病で細菌が身体に進入してくると、身体を守る働きが起こり、その際にサイトカインという物質が作られます。サイトカインの中には、血糖値を下げるために分泌されたインスリンの働きを阻害するものがあり、インスリンの効果が現れにくい状態となります。その結果、血糖コントロールが難しくなるといわれています。逆に、糖尿病の患者さんの歯周病を治療することによって、血糖コントロールが改善し、糖尿病の重症度の指標である血液中のHbA1c値が低下するとの報告があります。
糖尿病の予防や治療効果を高めるためには、歯周病の予防や治療も重要な因子となります。歯周病にかからないようにするためには、歯科医院を定期的に受診し、口腔衛生管理の指導を受けることをおすすめします。
第182回:新年のごあいさつ
理事長 前島 静顕 ☆
(東京医科歯科大学大学院臨床教授 日本外科学会認定指導医 日本消化器外科学会認定医)
新年明けまして、おめでとうございます。
昨年は年頭にあたり、日本の医療を取り巻く幾つかの問題点を提議致しました。一年が経過しそれらが解決・改善の方向に動き出したかと振り返ってみましても残念ながら否と言わざるを得ません。むしろ、より深刻化している問題があります。今回はその中で、ここ数年来取り上げられていますインフォームド・コンセントにつきまして私の考え、現状認識を述べます。
1990年に日本医師会・生命倫理懇談会でインフォームド・コンセントを「説明と同意」と訳し、日本独自の解釈を加えました。その後、医療現場に定着してまいりました概念ですが、利点の反面、幾つかの問題点があると思います。
利点として①患者様の人権擁護②高額医療や保険の限度設定③セカンドオピニオンによる信頼関係の補強等があげられます。概念の導入当初はこのような利点に目が向けられ、急激に普及してきましたが、今日現場で活用されるに従い幾つかの問題点が生じてきているのも事実です。①誰が自己決定権をもつのか②日本人の気質に合わない③いつ自由意思が尊重されているのか④主体性の尊重とパターナリズムとの衝突⑤医学部の教育段階で既に時間・費用不足⑥建前のみのインフォームド・コンセント⑦医師の労働時間の増加等々が特に焦点となる問題点かと思われます。詳細は省きますが、これらはどれも未だ解決をみず、今後さらに検討・整備してゆく必要がある問題です。
最後に現状打開のために、幾つかの提案をさせていただきます。
1.時間制限のないインフォームド・コンセントの見直し
2.情報提供の範囲を明確化する
3.円滑かつ十分な理解に繋がる資料の作成
4.電子カルテ普及によるデータ開示の簡便化
医療環境の改善を目指し、あらゆる機会を利用し現場の声を発信してゆきたいと考えています。
当院は今後さらなる医療の発展のため、ソフト面の整備の充実をはかり、
当院の設立の原点である「思いやりのあるやさしい医療」と「最新の高度医療」の実現に向けて努力を続けていきます。
受付しております。