健康セミナー
2017年分
- 第265回:『いろいろな貧血』
- 第264回:『インプラントを応用した入れ歯』
- 第263回:『大腸がん検診でがんが見つかる割合』
- 第262回:歯周病で溶けた歯槽骨を再生させる新薬が登場
- 第261回:『胃がん内視鏡検診が始まっています』
- 第260回:『咽喉頭異常感症について』
- 第259回:『腸閉塞について』
- 第258回:『肘の痛みのお話』
- 第257回:『ピロリ菌除菌後の定期的内視鏡検査の重要性』
- 第256回:『要注意!乾燥期のかくれ脱水』
- 第255回:『がんの予防と検診の勧め』
- 第254回:新年のごあいさつ
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第265回:『いろいろな貧血』
内科 西田 淳二
(内科認定医)
貧血になると動悸や息切れが起こり、疲れ易くなります。赤血球中のヘモグロビンという酸素を運ぶ、鉄を含むタンパク質があって、それが足りなくなるために体が酸素不足になって起こる症状ですね。
成長期のお子さんや若い女性の貧血の多くは鉄分の摂取が足りなくて生じる、鉄欠乏性貧血です。成人男性やご高齢の方の貧血は胃腸からの慢性出血が原因のことがあり、内視鏡などの検査が必要です。
これらの貧血は赤血球の中身であるヘモグロビンが少なくなるため赤血球のサイズが小さくなります。またフェリチンという、体の鉄貯蔵量を反映する数値が低くなることで診断できます。
一方、ビタミン不足で起こる貧血もあります。ビタミンB12は赤血球が増えるのに必要ですが、その吸収には胃からの因子が必要であるため、胃を全部切り取ると5〜10年後にビタミンB12欠乏性の貧血になります。ビタミンB12は神経の栄養素でもあり、放置すると痺れなどの神経障害を生じ回復しません。この貧血は赤血球サイズが大きくなるのが特徴です。
その他、赤血球が壊されていく溶血性貧血、腎臓からのホルモンが出なくなって起こる腎性貧血、白血病に似た血液疾患で起こる慢性貧血、さらに稀ではありますが遺伝性の貧血など様々なものがあり、原因によって治療法が異なります。鉄欠乏以外の貧血に対して鉄剤を投与すると鉄過剰症になる危険もありますので、診断をしっかりつけることが大切です。
第264回:『インプラントを応用した入れ歯』
歯科口腔外科 田中 憲一
入れ歯が痛い、外れてしまう、よく噛めないなど現状に満足していない方もいらっしゃると思います。もちろん調整するか新しく作り直す事がまず必要ですが、それでも改善しないことがあります。ではなぜ痛いのでしょうか?硬い骨と硬い義歯の間に軟らかい粘膜(歯ぐき)を挟んだ状態で噛むため、入れ歯が動くと粘膜が圧迫されるからです。つまりこの入れ歯の動きを無くせば良いのです。従来は、いわゆる入れ歯安定剤が使用されましたが十分ではありません。そこで、現在はインプラントを応用して入れ歯を安定させるIOD(インプラント オーバー デンチャー)が広まっています。もちろん、6〜8本のインプラントを植立することが出来れば、固定式のブリッジも可能ですが、手術も大変で多額の費用がかかります。また骨の量が少ないため適切なサイズ、本数が植立できないことが多いのが実情です。IODは1〜4本(多くの場合2本)のインプラントを植立して、樹脂製のボタンのような装置やマグネットなどを利用して入れ歯を内側から支えることにより、入れ歯が外れたり、痛くなるのを防いで安定して噛めるようにする治療です。骨の量が少なく固定式が無理で諦めていた方でも、植立する本数が少なくて済むため、ほとんどの方が可能となります。また手術侵襲も少なく、費用も固定式と比べ抑えられます。特に、下アゴの骨が高度に吸収した状態の方に有効です。もちろん術前の検査、診断、シミュレーションが重要となります。基本的には外来処置ですが、より安全に快適に処置を希望される方には鎮静法を適応する1泊入院での処置をお勧めします。高齢社会と言われる中で、従来より元気で積極的な高齢者が増えています。インプラントを応用することにより、毎日の生活を今より快適にする事が可能となります。
第263回:『大腸がん検診でがんが見つかる割合』
外科 近藤 純由(いと) ☆
(日本外科学会専門医/指導医 日本消化器外科学会専門医 日本大腸肛門病学会指導医 日本消化器内視鏡学会専門医/指導医)
秋を迎えると、検診で要精査と言われて病院を受診される方が多くなってきます。検診の中でも比較的手軽に受けていただけるのが40歳以上の方を対象とした大腸がん検診です。一般的には便を2回採取して、便潜血反応(便に血液が混じっているかどうか)を調べます。肉眼的にはみえない微量の血液を検出することができます。大腸からの出血に反応する一方で鼻出血や胃潰瘍出血などには反応しにくいため、大腸がんや大腸ポリープ、痔や出血性の腸炎があると陽性となります。大腸がん検診を毎年受けると大腸がんでの死亡率が60%低下するとされていますが、日本での大腸がん検診受診率は30%にも満たない状況です。大腸がん検診を受けて便潜血陽性と判定される割合は約5%ですので、1万人検査を受けると約500人が陽性となります。では、陽性と判定されて2次検査を受けた500人の中で大腸ポリープや大腸がんが発見される人はどれぐらいでしょうか。大腸ポリープは約100〜200人発見され、大腸がんは約1人発見されます。しかし、陽性反応がでても2次検査を受ける方は約50%と少ないため、実際はより多くの患者さんがいることになります。残りの大半の方は痔があるか異常なしという結果ですが、痔のある患者さんでは便潜血反応が陽性となっても痔の出血だろうと考えて、病院を受診されない方が少なくありません。2次検査は大腸内視鏡検査が推奨されています。近隣の医療機関へご相談ください。
第262回:歯周病で溶けた歯槽骨を再生させる新薬が登場
歯科口腔外科 秋月 弘道
(日本口腔外科学会指導医 日本口腔外科 学会専門医)
本年4月塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)を有効成分とする世界初の歯周組織再生薬(商品名リグロス、科研製薬)が発売されました。適応症は「歯周炎による歯槽骨の欠損」です。bFGFは1970年代に見つけられ血管新生、軟組織や骨組織などを再生する生理活性を持つことがわかりました。
歯周病は炎症が歯周組織に広がり、歯槽骨が溶かされて歯がぐらついたり、抜けたりする病気です。従来、進行した歯周病治療には歯周組織の病変を取り除く歯肉剥離掻爬手術が行われていましたが、この手術には歯周組織が回復する際に本来は骨で埋まるべき部位が軟組織で埋まってしまう問題がありました。今回発売が開始された「リグロス®」を手術時に歯槽骨の欠損部に塗布すると、骨芽細胞や線維芽細胞、セメント芽細胞の分化を誘導することにより歯周組織の再生を促すと言われており、歯槽骨も早期に再生させることが期待できます。
約1,000名の歯周病患者を対象とした複数の臨床試験が日本国内で実施されました。その結果、3カ月ほどで軟組織が、続いて歯槽骨が再生し、約9カ月後に治療効果が最大に達しました。手術時に「リグロス®」を歯槽骨欠損部に塗布することで、歯槽骨の増加など歯周組織再生に対する有効性が確認され、本年、発売に至りました。「リグロス®」は保険承認されたお薬で、手術および「リグロス®」の使用も保険診療で行うことができます。「リグロス®」は現在、使用できる施設が限られています。治療を希望される場合には予め施設にご確認ください。
第261回:『胃がん内視鏡検診が始まっています』
総合診療科 濱田 節雄
(指導医:日本外科学会 日本消化器外科学会 日本消化器内視鏡学会 日本大腸肛門病学会 日本消化器病学会 )
今年度から埼玉県のがん検診の一つとして胃内視鏡(胃カメラ)による胃がん検診が始まっています。50歳以上であれば2年に1回は受診をお勧めしています。今までバリウムを飲むX線検査で胃がん検診を行ってきましたが、バリウムによる検診か内視鏡検診か自分で選ぶことができるようになりました。
最近では初期の胃がんであれば粘膜の一部を内視鏡を使って切り取るだけで済むようにもなってきました。胃を切除することがないため、患者さんの体への負担も軽くなっています。しかし、このような方法が可能となるためには、胃がんの早期発見が必要です。
消化器専門の医師の間ではバリウムによる検査より内視鏡検査の方がより小さな病変、つまりより初期の胃がんを見つけることが可能であるというのが常識でした。しかし厚労省は明らかなデータが無いという理由で、長い間内視鏡検診を推奨してきませんでした。
ところが近年、内視鏡検診によって胃がん死亡を減らせるというはっきりした証拠が出てきたため、実現される事になりました。
近年普及した鼻から入れる直径5㎜の内視鏡を使えば楽に検査を受ける事ができ、口から入れる10㎜のものと遜色ない画像が撮影できます。お近くの自治体にお問い合わせの上、胃内視鏡による検診をお勧めします。
第260回:『咽喉頭異常感症について』
耳鼻咽喉科 合津 和央 ☆
(日本耳鼻咽喉科学会専門医)
「食事はのどを通るし、痛みも咳もなく、風邪でもないのにのどに何かが詰まっている感じ」がした経験はありませんか。これを咽喉頭異常感症と言います。のどの症状ですが、必ずしものどの病気が原因とは限らず、考えられる病気は多種多様です。
鼻の病気(副鼻腔炎、アレルギー性鼻炎)
口腔の病気(唾液減少)
咽頭の病気(早期嚥下障害、慢性扁桃炎、下咽頭がん、睡眠時無呼吸症候群)
食道―胃の病気(逆流性食道炎、食道がん)
精神疾患(うつ病、神経症)
内科疾患(慢性鉄欠乏性貧血、甲状腺機能低下症)
耳鼻咽喉科では最初に問診で病気の見当をつけ、ついで内視鏡検査を行います。のどの奥までしっかりみれば約半数は診断がつきますが、残りの半分は内視鏡的異常がないとされています。この場合は採血、頸部エコー、副鼻腔レントゲン、胃カメラなどの検査等を追加で行います。
最近増えている病気としては逆流性食道炎があります。夜間寝る直前に食事を腹一杯食べてすぐ横になると胃酸が食道まで逆流して上がってきます。胃酸はのどに有害ですので、咽頭収縮筋が反射的に収縮して胃酸をブロックしてくれます。のどの筋肉が過剰に収縮するので詰まった感じがすることになります。この病気は胃カメラで食道にただれがあることで診断します。
残念ながら検査でも診断がつかず咽喉頭異常感症の病名が残ってしまう場合もありますが、この場合は経過観察が必要です。症状が自然に改善するものは概ね心配ないですが、重大な病気が隠れていることもあり、まずは耳鼻咽喉科にご相談ください。
第259回:『腸閉塞について』
外科 長谷川久美
(日本外科学会専門医/指導医 日本消化器外科学会専門医/指導医 日本消化器病学会専門医 日本がん治療認定医機構がん治療認定医 マンモグラフィ読影認定医)
皆さんは腸閉塞という病気をご存知ですか。
腸閉塞は、文字通り腸が閉塞して便が出なくなるという、誰でもかかりうる身近な病気です。便秘は、大腸の動きが悪くて便が出にくいことですが、腸閉塞というと、急に小腸がつまることを指すことが多いです。
小腸は、胃と大腸の間にあって5㍍と長く、消化吸収のほとんどを担う大事な器官です。蠕動運動といって比較的自由に伸びたり縮んだりして食物を運んでいます。
普段はカメラでは検査されない病気知らずの小腸ですが、何かの拍子にその一部が腹部のちょっとした隙間に入り込んでねじれると腸閉塞を起こします。腸閉塞を起こすと小腸に腸液がたまって風船のように膨らむので、鼻から小腸まで管を通し排液させてねじれをとります。
時に血流障害を起こして緊急手術が必要となることもあります。腹部の手術歴のある人では、癒着といって手術部付近に炎症のため結合組織で硬くなった部位ができ、そこに小腸が引っかかり腸閉塞を起こしやすいことがあるので注意が必要です。
また大腸では大腸癌による腸閉塞もあり、これは緊急の外科対応が必要となります。便が出なくて苦しいといっても、人によって病態はさまざまですので何かあればいつでもご相談ください。
第258回:『肘の痛みのお話』
整形外科 寺山 恭史
(東京女子医大整形外科学教室助教 日本整形外科学会認定整形外科専門医 日本手外科学会認定手外科専門医)
物を片手で物を持ち上げようとした時に肘の外側が痛いという経験はありませんか。上腕骨外側上顆炎という病気があり、別名をテニス肘と言います。中高年でテニスをする人の3〜5割が経験すると言われ、実はテニスをしない人でも4〜7%の人がかかる病気です。原因は手の使いすぎにより、手首をそり返す筋肉の肘の骨に付くところが炎症を起こしてしまうためです。物をつかんで持ちあげようとするときには手をそり返す力を使うため、この部分に負担がかかり、痛みを生じます。手を使わないようにしていれば自然に治ることも多い病気ですが、長期にわたって繰り返す人もいます。
病院では簡単なテストと検査でおおよその診断がつきます。治療はストレッチの指導や腕に巻く治療専用のバンド、痛み止めの内服、湿布や塗り薬を使用します。治りが悪い場合には注射をすることもありますが、頻回の注射は推奨されていません。治療を受けても長期間にわたり炎症が続くと、炎症を繰り返した部分が変化してしまい、完治が難しくなります。そのため、治りにくいテニス肘には手術が必要になることもあります。手術は肘の外側を切開して行いますが、最近は関節鏡を用いた傷の小さな手術も行われています。
大事なことは病態をよく理解し、炎症を繰り返さないように注意することです。ぶつけてもいないのに肘の外側が痛いとか、痛い手をかばっているけどなかなか治らないという方は、早めに整形外科を受診して、適切な治療を受けることをお勧めします。
第257回:『ピロリ菌除菌後の定期的内視鏡検査の重要性』
外科 兼子 順
(東京医科歯科大学医学部臨床教授 日本外科学会専門医/指導医 日本消化器外科学会認定医 日本消化器内視鏡学会専門医 厚労省認定臨床研修指導医)
胃や十二指腸に潰瘍や炎症を引き起こし、胃がんの原因の一つとされるヘリコバクターピロリ菌に感染している日本人は、3500万人を上回るとの統計を厚生労働省研究班が報告しました。国内の複数の研究では、胃がん患者のうちピロリ菌に感染していない割合は1%に満たないと報告されています。世界保健機構(WHO)の国際がん研究機関(IARC)は2014年に「胃がんの8割はピロリ菌感染が原因。除菌により、発症率は3〜4割減る」との報告書を発表しました。現在では、ピロリ菌が関与している病気のほとんどで除菌療法が保険適用になりました。除菌療法とは、胃酸分泌を低下させる薬と2種類の抗生物質を1日2回、1週間飲む治療法です。日本人の除菌成功率は70〜80%と言われています。1回の除菌治療で除菌不成功の場合は、別の薬で2回目の除菌が保険で認められています。ピロリ菌感染による胃炎と診断するのに内視鏡検査が必須であることや、胃がん検診でX線検査以外に内視鏡検査を選択できるようになったことは、胃がんの早期発見の増加が期待されます。ただし、「ピロリ菌を除菌すれば胃がんにはならない」と誤解されていることが危惧されています。除菌により胃がんの発症リスクが下がることは事実ですが、感染による萎縮性胃炎に潜在的ながんが存在している場合も想定されています。除菌が成功しても1〜2年に1回程度、萎縮性胃炎がある場合は毎年内視鏡による胃がん検診を受けたほうが良いとされています。胃がんの早期発見・早期治療により、胃がんによる死亡率を低下させます。
第256回:『要注意!乾燥期のかくれ脱水』
総合診療科 山形 健一
(日本外科学会専門医 日本消化器内視鏡学会専門医 日本消化器外科学会認定医 日本癌学会会員)
今や、国内よりもむしろ海外で人気が高まっている日本伝統の芸術文化「盆栽」。4年に一度の盆栽の祭典「世界盆栽大会」が、国内では28年ぶりに4月27日から30日までの4日間、さいたま市を会場に開かれます。盆栽を育てる上で最も大切なことは水やりです。
盆栽は水を与えなければすぐ枯れてしまいます。
我々人間においても、生命を維持するために最も必須な栄養素は水です。細胞は水分を介して栄養素を取り込み、さらに水分は摂取した栄養素と代謝産物を排泄するための主要な溶媒です。
発汗の多い夏場の脱水予防を心がけていらっしゃる方は多いのですが、ご高齢者にとって夏より危険なのが、冬から初春にかけての「乾燥期のかくれ脱水」です。気候が乾燥すると、汗は出ていないのに体から水分が失われやすくなります。それは不感蒸泄が増えるからです。
不感蒸泄とは、皮膚・粘膜・呼気などから知らないうちに失われる水分のことです。また冬場は寒いので、「水分をとりたいな」という気持ちになりにくいものですし、おしっこの回数が増えるからと水分摂取を控える方が多いようです。
かくれ脱水のサインは、お口のねばねば感・肌の乾燥・まぶたのぴくぴくなどです。寒い乾燥期のかくれ脱水は、脳梗塞や心筋梗塞などの引き金になります。
盆栽育成の基本は「土の表面が乾いたらたっぷりと水を与える」です。しかし我々は、かくれ脱水のサインが出る前に、こまめな水分補給を心がけましょう。樹齢1000年の名作「真柏 銘・飛龍」目指して生涯現役!大宮盆栽村在住45年 医師。
第255回:『がんの予防と検診の勧め』
外科 遠藤 健 ☆
(日本外科学会専門医/指導医 日本消化器外科学会専門医/指導医 消化器癌外科治療認定医 日本大腸肛門病学会専門医/指導医/評議員 日本臨床外科学会評議員)
1981年以降、日本人の死因の第1位はがんで、高齢化社会となり2人に1人ががんに罹り、3人に1人ががんで亡くなる時代です。2016年の統計では1年間に101万人が新たにがんと診断され、37万人が亡くなっています。現在、掛かる人数の最も多い大腸癌と死亡者数の最も多い肺癌の増加傾向が著しく、その対策が急務な状況です。WHO(世界保健機関)によると禁煙、健康的な食生活、適度な運動によりがんによる死亡のうち40%が予防可能と言われています。特に喫煙はがんによる死亡の最大原因で、肺癌の80〜90%が喫煙に起因し、受動喫煙も関与が深いとされがん予防の第一歩はまず「禁煙」からです。「肥満防止」も重要で標準体重の維持を目指して下さい。また毎日少なくとも30分の「運動」も推奨されます。その他に「植物性食品摂取の推進」「赤肉や加工肉摂取の制限」「塩分と脂肪摂取の制限」「節度ある適度な飲酒」「母乳保育の推進」等ががん予防に有効です。
予防策を講じていてもがんになった場合、その治癒の目安である5年生存率(診断されてから5年後に生存している割合)は、がんの種類によって異なりますが平均で62%です。5年生存率は転移を認める進行した状態では治療法が進歩した現在でも14%まで下がってしまいますが、早期では90%です。これは早期発見すればがんは治せる病気であることを意味します。健康な生活を送るために最低でも年1回はがん検診を受けることをお勧めします。
第254回:新年のごあいさつ
理事長 前島 静顕 ☆
(東京医科歯科大学大学院臨床教授 埼玉医科大学外部講師 日本外科学会認定指導医 日本消化器外科学会認定医)
新年明けまして、おめでとうございます。皆様、お健やかに新春をお迎えのことと存じます。昨年を振り返りますと、イギリスのEU離脱、難民受け入れをめぐるドイツ、フランスをはじめヨーロッパ各国の混乱、アメリカでは大方の予想を覆してのドナルド・トランプ氏の次期大統領当選、また、アジアでも韓国の政情不安定等、予期し得ない事態が頻発しました。地球規模の混沌とした社会状況で新年が明けました。わが国への影響も多大であります。中でも、トランプ氏は過激な自国優先発言で何かとお騒がせの人物ですが、昨年、私がこの紙上で申し上げましたTPP(環太平洋経済連携協定)についても棚上げ・撤回を示唆しています。日米二国間交渉を想定しているようです。ただ、わが国の医療への影響はどうか?何か違いが出るかと想像しますと、風圧はより強まり、尚一層厳しい環境になることが予想されます。注意深く今後の推移を監視すべきことは言うまでもありません。一方、わが国の医療における問題点に目を向けますと、私がここ数年来ずっと懸念してきたことですが、医師の教育制度に大きな欠陥があります。専門医制度・認定医制度等の医師資格制度及び専門領域の細分化が医師の基礎知識、基礎的診療技術の体得に障害となっている現実です。
専門的な領域、特殊で稀な疾患に取り組むことも大事ですが、まず、医師として基礎的な分野にじっくりと時間をかけ、幅広い領域・疾患に対応でき得る能力を身につけてから次のステップへ進むような医師教育制度の導入が必要と痛感しています。患者様方からは、医師であれば診てくれるだろうとの要望があり、まして、地域医療を担う医療機関の医師ならば何とかしてくれるだろうとの期待が強くあると思います。診療科が違うとか専門外だからはNOです。蓮田病院は来年創立30周年を迎えます。医療を取り巻く環境はますます厳しくなりますが、私の信念でもあります地域医療の充実、医療・介護・在宅医療との連携による地域完結型の医療の実現をめざし、不断の努力を尽くす所存です。地域住民の皆様方のご健康とご多幸を心より祈念申し上げます。
当院は今後さらなる医療の発展のため、ソフト面の整備の充実をはかり、
当院の設立の原点である「思いやりのあるやさしい医療」と「最新の高度医療」の実現に向けて努力を続けていきます。
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